みんなに話したくなる桜島のヒミツ(後期)桜島は天然の博物館

岩だらけの世界にも植物が戻ってきます。

これは本当にすごいことです。

溶岩が流れ、ごつごつした固い石ばかりの何もない世界を裸地と呼びますが、この状態に植物が生えてくるのを火山地帯で見ることができます。

最初に生えてくるのはコケや地衣類です。

コケは胞子ができると水分を得ながら生き延びます。

このコケは土の基になり、土には草が生えます。

最初に生える草はススキです。

ススキは火山ガスや酸性雨などに強くどんどん生えてきます。

草が生えると、遠くから木の種子が飛んできて留まります。

水分も確保でき、そこから木が生育します。

最初に生えてくるのは黒松です。

太陽が好きな木陽樹の黒松は、太陽の光を浴びぐんぐんと伸びて、その結果日陰を作ります。

でも日陰では子孫は育たないので遠くへ松ぼっくりを飛ばします。

そして新しい土地を見つけ、荒れ地をどんどん回復させます。

こういう植物をフロンティア植物、先駆性植物といいますが、桜島には黒松が多く育っていて、黒松の下の日陰には日陰の好きな木が生えます。

日陰を好む陰樹は自分の下に実を落とします。

椨(たぶ)や椎(しい)など実を落とすタイプの木に代わっていきます。

その先は同じサイクルを繰り返して森の変化が止まり極層林となります。

このような変化の様子を全部見ようと思えば、200年以上かかります。

長生きしなければなりませんが、人間の寿命では無理です。

ところが、桜島ではいろんな時代に溶岩が流れているので、この状況をすべて見ることができます。

さまざまな植生の状況を間近に見て、200年分の変化を確認することができるのです。

まさに「天然の博物館」なのです。

ですからぜひ桜島を一周して、この変化を見ていただきたいと思います。

200年分生きたことと同じ価値があります。

このために多くの外国の人が桜島に訪れています。

桜島には多くの貴重な資源があり、現地で見るとおもしろいものがたくさんあります。

そんなことを実体験する旅に出かけませんかと「桜島ミュージアム」では提案しています。

桜島で遊ぶ例として、有村地域では砂浜を掘ると温泉が出てきますので、足湯に浸かって大地の恵みを感じることができます。

カヤックを漕いで海から桜島を眺めることもできます。

いろんな体験ができることを私たちは情報発信しています。

講演を聴くのもよいですが、現地に行けばまた違う大きな感動が得られます。

その体験を推奨しているのが「桜島錦江湾ジオパーク」の活動です。

ジオパークとは大地と人と自然を感じて、楽しみながら学べる地域のことです。

桜島は火山を中心に、歴史、自然、地形や地質、防災、災害や考古学、農業、いろんなものがつながっていることを実感することができます。

桜島小みかんも火山灰が作った扇状地があったからこそ育った作物です。

土砂災害が発生しやすく、住むには不適な土地ですが、水はけがよく斜面で日当たりが良いなどのメリットが果樹栽培に適して、農業生産と収益の向上につながったのです。

目の前にあるものはみんなつながっています。

大地と人と自然はつながっています。

歴史のつながりだけでなく、大地も植物もつながっていて、私たちの生活がいろんなものとつながっていることを感じると豊かな生活が送れると思います。

今日の私の話が皆さんが豊かな生活を送られるためにお役に立てばうれしく思います。