ご門徒の家にお参りに行きますと、お仏壇にお茶やお水を茶湯器やコップに入れてお供えされている方がいらっしゃいます。
おそらく「仏さまや故人の喉を潤すため」という思いでお供えされているのではないかと思われます。
亡き方への追慕の心情をあらわすためのお供えとして、そのお気持ちは理解することはできます。
しかしながら、故人が往生されたお浄土は「八功徳水(はっくどくすい)」という、このうえもなく清浄で美しい八つの徳をもつ水に恵まれた世界だと経典に説かれています。
ですから、浄土真宗では「仏さまや故人の喉を潤すため」に茶湯器やコップにお茶やお水をいれて、お供えする必要はないのです。
とはいえ、お水は私たちが生活していくなかで欠かすことのできない大切なものです。
この大切なお水を仏さまのお恵みと味わい、生かされていることへの感謝から仏前にお供えするならば、それは立派な報恩の行になります。
その報恩の思いから、水をお供えするために、浄土真宗では茶湯器やコップではなく「華瓶(けびょう)」という仏具を用います。
華瓶一対に水を入れ、樒(しきみ)または青木を挿して、「上卓(うわじょく)」に置きます。
樒を入れるのは、香木だからであり、香水(こうずい)としてお供えするのです。
仏さまのお恵みを清らかな香水にして供えるところにお敬いと感謝の心が込められているといえます。
なお、仏壇によっては、上卓がない場合もありますし、上卓に置く華瓶もない場合もあります。
華瓶がなければ、あえてお供えする必要はありません。
また、もともとお茶は仏前のお飾りの作法に含まれてないので、基本的にはお供えはしません。
とはいえ、毎朝自分がお茶をいただくので、先ず仏さまにお供えして、そのお下がりを飲まれるというのであれば、お供えしても差し支えないと思われます。
ただし、お供えしたままにして、翌日そのお茶を捨ててから新たにお供えするということであれば、意味が変わるのでお供えする必要はないといえます。
わからないことがあれば、所属するお寺のご住職に直接おたずねいただければ幸いです。