この3月に、65年続いた保育園を閉めることになりました。祖父が開設し、父が跡を継ぎ、その後を私が引き継いでちょうど10年。一時期は100名を超える子どもたちが通っていた園でしたが、最後の1年は10名の子どもたちと一緒に過ごしました。
最後の年なので、「いろいろと記念行事」を考えていましたが、新型コロナウイルスの流行でそれも縮小傾向になりました。最後の運動会、最後の発表会と、行ううちにあっという間に最後の月を迎え、「最後のお茶会」「最後の仏参」「最後のお別れ遠足」と来て、ついに「最後の卒園式」。
みんなで『正信偈』のお勤めをし、子どもたち全員に保育証書を手渡し、参加してくださった保護者のみなさんと来賓の方にお礼の言葉を述べました。
その後も、3月30日まで保育園は開けていましたので、30日が園児の通う本当に最後の日でした。この日は「どうやって過ぎるのだろう」とずっと想像していましたが、いつものように朝一番の親子を迎え、いつもの朝の体操とマラソンをし、季節の歌をうたい、子どもたちと先生のにぎやかな声が聞こえました。「最後の給食」も、子どもたちはいつものように吹き抜けのランチルームで楽しく食べ、お昼寝をし、「最後のおやつ」を食べました。
ここまではいつものように過ぎていましたが、突然泣き声が聞こえ始め、だんだんと大きくなりました。「どうしたのだろう」と思って見に行くと、担任の先生と年長さんが数名おいおい泣いていました。お別れがつらかったのだそうです。
その後一人、また一人とお迎えが来て、「またね」と話しながら帰っていきました。記念撮影をしていく親子もいました。最後の一家族を送り出し、残った保育士としばし園庭の満開の桜をながめながら「終わりましたね」と話すと、若手の保育士の目には涙が浮かんでいました。
「最後の〇〇」を重ねていくうちに気がついたのは、これは特別な日ではなく、毎日のことなのだということでした。私たちは毎日、その日しかない今日を生きているのです。今日は二度と来ない一日。毎日が「最後の日」なのですね。
Thanks 65th(ありがとう65年間)。
「令和3年4月1日」、保育園にいた子どもたち、そして職員全員、新しい一歩を踏み出しました。