セイタカアワダチソウへの誤解

「今年も一年あっという間だったね~」

年の瀬を感じるこの時期の決まり文句。

よく耳にするし、つい口から出てしまう言葉です。

特に夏の終わりを感じはじめてからは、常に何かに追われる日々で、気がつけば年の暮れ。

そして、お正月休みもあっという間に終わってしまいます。

 

すこし季節が戻ってしまいますが、

秋になると道路脇の空き地や畦道、土手などで良く見かける、黄色くて群になって咲き誇っている、あの植物。

「去年はここにこんなに咲いていたっけ?」と、その繁殖力に、怖ささえ抱いてしまいそうな勢いです。

その名も「セイタカアワダチソウ」。

 

都会を離れて暮らし始めてから、よく目にするようになりました。

その繁殖力と大きく伸びた強そうな茎。

花粉を撒き散らしそうな真っ黄色の花。

全くもって自分勝手ながら、私の中では、あまり手入れの行き届いていない土地の、やっかいな雑草の象徴のような存在でした。

 

昨年の秋のことです。

セイタカアワダチソウが、その存在を見せつけてくる時期。

まさに道の両脇のどちらもが黄色くなってしまった道路を車で走っていました。

その存在に、ぼんやりと嫌なイメージを持っていた(が、口に出したことはなかったと思います)私の隣で、「うわぁ!気持ちわるぅ! こわいこわい」と車を運転していた夫が叫びました。

セイタカアワダチソウが大嫌いみたいです。

正直、セイタカアワダチソウとは直接的な関わりはなく、いつも眺めているだけだったので、「そこまで嫌なの?」とびっくりしましたが、嫌なイメージに対しては共感できました。

 

そうこうしているうちに、なんと借りている家の隣の空き地にセイタカアワダチソウがニョキニョキと姿を現したのです。

そして、その上の段の畑にも…。

みるみるうちに数が増え、こちらに迫ってくるように見えました。

夫は、またそれを大げさなほどに嫌がり、「種が飛ぶ前に、何としてでも刈り取ってやる」と意気込み、できる範囲全てを刈り取りました。

 

その成果なのか、今年は空き地にほとんど姿を見せなかったセイタカアワダチソウ。

何故か、その繁殖力に勝利した気がました。

 

そんな私に思わぬニュースが入ってきました。

なんとセイタカアワダチソウは、実は「良い草」なのだそうです。

「え?」という思いで、にわかには信じがたく、早速ネットで調べてみました。

「アメリカ原産の外来種で現在は日本全国にほぼ分布している」

「最初は観賞用の植物として輸入された」

「繁殖力は旺盛」

などの記述があり、その中に「花粉は比較的重く、風では飛ばないため喘息や花粉症の元凶とはならない(花粉は虫などが媒介する)」と、書かれていました。

また、薬草として体内の毒を排出してくれる効果があり、アメリカでは花はハーブとしても利用され、蜂蜜の原料として養蜂家には重要な植物なのだとも…!

 

セイタカアワダチソウに申し訳ない気持ちになりました。

いかにも飛んでいきそうな黄色い花粉は、実は風では飛ばないようで、花粉症の原因になると言われているのはよく似たブタクサという植物だそうです。

花が咲く直前の状態で摘んでお風呂に入れると薬草風呂にもなるとか。

さすがにそれを試してみる勇気はまだないのですが、ちゃんと近くで見てみたい気持ちになりました。

そして、拒否反応を示していた夫も「え? うそでしょ?」と、目を丸くしながらその事実に驚いていました。

 

思い返してみれば、私は何の根拠もなく、勝手な想像だけでセイタカアワダチソウを嫌いになってしまっていたのでした。

そして、同じようなことがきっと私の身の回りにはたくさんあるのではないかと、「ハッ」としました。

 

かねてよりご法話で、「私たちは、自分中心のものさしで物事をはかっている」と、聴かせていただいています。

この私も例外ではなく、まさにその一人なのでした。

 

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。