『数十年ぶりの〇〇』

先日、部屋の天井についている扇風機を掃除しました。特に使うことなく、天井に登るのも面倒なので何十年も放置していました。脚立で登り、部品を外そうにも、埃とサビでなかなか外れず苦労しました。汗だくになりながらなんとか扇風機の枠とハネを外すと、ハネが金属で作られており驚きました。プラスチックのハネだとばかり思っていましたが、金属!?調べてみると昔のものは金属製だということを知り、かなりの年代物だと思います。

いざ掃除を始め、水洗いすると埃のかたまりがたくさん、洗剤でゴシゴシ洗い、しっかり乾かして、元に戻すと、見違えるように綺麗になりました。せっかくなので、スイッチを入れてみると、ちゃんと回り始め風を届けてくれました。今年の夏を、少しでも快適に過ごすアイテムとなりそうです。

掃除というと思い浮かぶお話があります。

お釈迦様のお弟子の一人で周利槃特(しゅりはんどく)というお方のお話です。

周利槃特は非常に記憶力が悪かったといわれ、お釈迦様の説法を聞いてもいつも理解できず、すぐに忘れてしまいます。

そんな彼にお釈迦様は一本のほうきを渡し、次の一句を教え、とにかく掃除をするように言いました。

「塵(ちり)を払い、垢(あか)を除かん」

周利槃特は言われた通り、一心に「塵を払い、垢を除かん」と唱えながらほうきを持って掃き続けました。何年も何年も黙々と掃きつづける周利槃特の姿を見て、はじめは彼をバカにしていた他の弟子たちも一目置くようになりました。ある日、いつも通りに掃除をしていた時のこと、掃除した所を子どもたちに汚されてしまいます。思わず「きれいにしたのにどうして汚すんだ!」と怒鳴りました。その瞬間、彼は本当に塵や垢が積もっている場所があることに気づいたのです。

掃いても掃いても汚れるのはまさに自分の心であることに。

それから周利槃特は、仏さまの教えを理解するようになり、悟りを得たというお話です。

自身の心と向き合うこと、見つめることの大切さを教えられます。

何年も掃除し続けた周利槃特。一方、埃にまみれた扇風機を天井に登るのが面倒、使わないからと何十年も放置していた私自身に恥ずかしくなりつつ、これからは定期的に掃除しようと扇風機の風にあたりながら思ったことです。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。