======ご講師紹介======
根來泰周さん(弁護士)
☆ 演題 「危うい未来」
根來さんは、浄土真宗の僧侶でありながら、法曹界、プロ野球コミッショナー、公正取引委員会とさまざまな分野の経験をお持ちです。
昭和7年、和歌山県生まれ。
教徒大学法学部を卒業後、法曹への道を選び、昭和33年4月に札幌地方検察庁検事に任官。
以後、法務省刑事局長などを経て、公正取引委員会委員長に就任。
平成14年に定年を迎え退官の後、弁護士となられました。
平成17年に日本プロ野球コミッショナーに就任。
平成19年1月に任期満了を迎えて退任されましたが、その後も「コミッショナー代行」の任に。
和歌山市の浄土真宗本願寺派玄妙寺住職であられると共に、京都の西本願寺で監正局長をお務になっておられます。
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裁判員制度というものが来年の5月から始まります。
しかしこれは非常に問題があるんですね。
検事や裁判官というのは、職務としてそういう仕事をしているのですが、一般の方はそういうのにかかわることはまずない訳です。
そんな状態で呼び出しを受けて、この人を死刑か無期懲役刑か決めなさいといわれても迷惑な話です。
それから、日当が8000円くらいだとあります。
実は昭和3年に陪審員法というのができていまして、日本にも陪審員制度があったんです。
この制度も、思い罪に対して民間の方が参与するという、今の裁判員制度と同じような形だったんですね。
ところが昭和18年の戦争中に、この陪審員法は停止になりました。
結局昭和3年から18年までの15年間で、陪審員法の適用を受けたのは400件程でした。
実際、この法律はあまり喜ばれなかったようです。
被告人は素人に裁判を受けるのは嫌だとして裁判を辞退したりしました。
そうなると、その制度があっても適用できないわけです。
裁判官や検事の方もめんどうくさいということで、あまり好みませんでした。
15年間で
「400件しかなかった」
のはそういう事情があったわけです。
そして昭和18年に、戦時中ということで陪審員法は停止になり、現在に至っています。
裁判員制度は、かつての陪審員法とは少し違いますけれども、やはり民間の方のお力を借りて裁判を進めていくものです。
しかし、これもどさくさにまぎれて制度が決まってしまいました。
ですから、今になって、弁護士会の中からもこの制度に反対だという立場の者が出てきたのです。
しかし反対していても、成立した以上はうまいこと運営してもらわなければいけないわけです。
一般の方々は、必ずしもこれに賛成ではないでしょう。
自分が裁判をやれと言われたら、これは大変です。
仕事があっても裁判員は義務ということで拘束されるわけです。
この裁判員制度を推す人は、アメリカやドイツを例に挙げて説明することがあります。
ですが、ドイツと日本では違いがあります。
産経新聞に載っていたことですが、ドイツの人は訴訟が好きで、国民全体が法律的な訓練をいろいろやるらしいんですよ。
それでドイツの人はそういう訴訟制度には、非常に親近感を持っているということです。
それかせもう一つは「公募制」です。
何か事件があったときに、誰かに来てほしいという要請があると、みんな喜んで行くんですね。
それはなぜかというと、名誉があるからとのことでした。
ドイツでは、裁判員になると後で表彰を受けたり、裁判官と一緒に写真を撮ったりする、そういう名誉を非常に喜びます。
裁判員になると、人格高潔という評価を受けるというんですね、
そんな訳で、ドイツでは裁判員になることを名誉に思ってみんな公募してきます。
しかし日本では8000円くらいのお金が出て、はいさようならと、これでは相当まずいと思いますね。
お願いしてやっていただくなら、やはりお金だけではなく、名誉を与える方法を考えないと、誰も協力してくれないんじゃないかと思います。
来年の5月21日からこの法律が施行されます。
それにあたって、鹿児島でもいろいろ宣伝していますが、それよりも実質をみんなに知ってもらうことが必要なんじゃないかと思います。
若い人には、ぜひ宜しくお願いしたいですね。