「危うい未来」(中旬) 職場でも家でも締めつけられる

次に、私は最近あまりよく思っていないことがあります。

それは、本屋では万引きは犯罪だとか、タクシーでシートベルトをつけろというように、外から締めつけられることです。

そのように、何から何まで言われてその通りにするという状態は、しまいには人から言われないと動けなくなる、つまり精神を腐らせていくんじゃないかと思えてしまうんです。

そのくらい外からの締めつけが厳しいと感じています。

 例えば、先日起きた秋葉原の事件について、私は犯人を弁護する気持ちはありませんし、被害者は本当に気の毒だと思いますが、ああいうものもやはり日本の社会の閉塞感というか、さまざまな締めつけに原因があるんじゃないでしょうか。

 今の若い人は、職場でも家に帰っても、いろいろ言われて締めつけられています。

犯罪事件の原因に直接結びつけるつもりはありませんが、そういう閉塞感というのが、ものすごく大きいのではないでしょうか。

だから若い人が自由に動き回れるような社会の方が望ましいと思います。

 日本の社会もだんだん変質してきました。

私が中学一年の頃は、ちょうど太平洋戦争の終戦の時期でした。

その私たちの学校に進駐軍が

やってきまして、進駐軍が校舎半分くらいを使っていたわけです。

夜になると他の連中と一緒に進駐軍にまとわりついて、ラッキーストライクとかキャメルという煙草をもらったり、チョコレートをもらったりしていました。

 周りは焼け野原で、社会も大変な時代でしたが、明るい青空の下を歩いている感じがしていたんです。

ところが今曇天の中で、先行きがどうにも暗い感じがしますよ。

やっぱり先行きをもっと明るくしないといけません。

それには裁判官も検事も、警察官もマスコミも、そして個人も、もっと社会をよく見て、足元をしっかり固めていかないと、時代を担う若者にバトンタッチができないでしょう。

 そのためには、やっぱり個人個人が社会福祉、社会貢献ということに目を向けていくことが必要ではないかと思っております。

私たちの場合は

『夢の向こうに』

という本を75万冊発行して、これを小学校の希望者に無料で配布しています。

この本の中には、野球選手やその他の人がどのように人生を歩んできたかということが書かれています。

 プロ野球の各糾弾でそれぞれやることについて私たちは文句を言えませんが、全体として社会貢献を球団としてやってもらうということを基本としています。

それを私どもの組織として行っていることの一つが

『夢の向こうに』

という本を出して、子どもに少しでも野球に関心を持ってもらい、あるいはフェアプレイの精神を学んでもらうということになります。

 それから、子どもたちに野球をやってもらうことを目的として、毎年12球団のジュニアトーナメントという大会を開催しています。

福岡でやったこともありますし、北の方でもやりたいということで、去年は冬の最中なのに札幌ドームで開催しました。

このように、野球を通してスポーツマンシップを学んでもらうということをします。

 それで野球で利益が上がった場合には、その利益を震災などの災害支援に提供するなど、社会貢献をしていくわけです。