菩提樹の下で覚りを開かれた釈尊が最初に説法されたのは、昔の修行仲間だった五人の比丘たちに対してであったと言われます。
如来が捨てた二つの極端とは、欲望のままに快楽の生活にふけることと、その逆の行為つまり肉体的な疲労消耗(苦行)にふけることでした。
苦行はインドの伝統的な修行方法のひとつであり、釈尊自身も六年の間、呼吸の制御や断食行などの厳しい難行を試みられたといわれますが、それによっては聖者の知見は得られないとし、苦行を捨てられました。
ともすれば、世の中の出来事や自分の生き方についてどう考えてよいのかわからない時、ほどほどがいいと言って、曖昧なものこそが中道とでもとらえられているかもしれません。
しかし、若い日に与えられていた衣食住すべてにわたる豊かな生活にもおぼれることもなく、極端な難行にも誘惑されることのない、正しい自覚の道こそが釈尊が選び取られた
「中道」
だといえます。