『おかげさまが 見える眼に』

「いかがお過ごしですか?」

との挨拶に

「おかげさまで何とかやっております。」

とのお返事。

「おかげさま」

は感謝の言葉です。

 それは、対面している相手に

「あなたさまのお力添えで…」

という意味も含んでいるのでしょうが、もっと広く

「皆様のお力添えで…」

とか、

「私をとりまくあらゆる方々の…」

という味わいも含む

素敵な言葉です。

 

「おかげさま」

をさらに分解すると、

「御陰」

「様」

が付けられています。

「御陰」

を辞書で引いてみますと、

「1.神仏の助け。加護。2.他人の助力。庇護。」

という意味が書かれていました。

この言葉の中に、目には見えないものにさえも感謝しつつ生きる姿がうかがえます。

 私たちは突然この世に生まれてきたわけではありません。

両親や祖先は言うまでもなく、数え上げるときりがないほどに数多くのいのちを縁として生まれ育ってきました。

さらに深く見つめてみると、生命と呼べるものがこの世に生まれて以来、何千年何万年といういのちの営みの中に今私のいのちが有ると言えるでしょう。

いや、生物だけではなくて、空気や水、太陽の光、いのちを育む大地・地球、地球の周りに有る天体、大宇宙にまで私たちのいのちは支えられ生きていると言っても間違いではないでしょう。

 また、私たちの日常生活においても同様に、家族や友人は言うまでもなく、名も知らない顔を合わせたこともないような人々ももちろん、あらゆるいのちが関わり合って成り立っているのが事実。

決して自分ひとりでは生きていけないのが私のいのちの姿でありましょう。

 

「おかげさま」

と、私を取り巻くいのちの働きに気づく眼(まなこ)をもてたならば、自分のいのちの何とも不思議で大切な姿が自然と見えてくるのではないでしょうか。

そして、それは自分だけではなく、他者に対しても向けられるとても大切な視線でありましょう。

「おかげさま」

に生かされ、

「おかげさま」

に生きる。

自他ともに敬い合う生き方、あらゆるいのちが、関係し合い、支えあって生きる世界が

「おかげさま」

の中にひろがっているのです。