「安心安全なまちづくり」〜治安回復は健全な家庭の構築から〜(下旬) 親子のつながり

警察研修社会長 田宮 榮一 さん

その娘も年頃になって恋人が出来た。

そし、恋人と結婚したいと父親に言いましたら、この父親は怒り狂って「てめえら、みんな叩き殺してやる」と暴れたんです。

それで娘は、忍ぶに忍びなく、酒を飲んで眠っている父親の首を絞めて殺した後、自首したという事件です。

情状酌量など、どういう場合に罪を軽くすることが出来るかということは法律で決まっています。

そして、この犯罪の場合、背景に殺されて当たり前だと言える親がいます。

そして子どもは自首しました。

しかし、そういったいろいろな事情、理由を並べて情状を酌量しても、裁判官は法律的な問題で執行猶予が付けられませんでした。

どけだけ罪を軽くしていっても、元々この尊属殺人罪には死刑と無期懲役しかなかったからです。

執行猶予を付けるためには、これが尊属殺人ではなくて普通の殺人でなければならない。

そこで裁判官はこの娘は気の毒だ、何とかしてやりたいという温情から、尊属殺人罪は憲法違反だという判断を下したと、こういういきさつがあったんです。

親が子を殺し、子が親を殺す。

その家庭はどうなっているのかというと、まさしく家庭の治安が一番乱れているのではないかという所に行き着くわけですね。

ですから、国や県、町の治安といったことを考える前に、自分の家庭の治安を考えなければならないんです。

しかもこの家庭の治安悪化は、外からの侵入者によるものではなく、自分を含めた親族で自ら乱してはいないかということが問題なのです。

家はあっても、家庭内の治安を考えず、また隣の家庭と力を合わせることもしない自己主義に、現在の多くの家庭が陥っているのではないかと思うんです。

小さくとも自分の家をしっかりまとめて、人に迷惑をかけない、そういうことから地域、町、県、そして国を想う心に繋がっていくのだと思います。

だとすると、まずはやはり家庭内のコミュニケーションが重要です。

そのための一言、一秒間の言葉を忘れていませんか。

一秒間の言葉をバカにしちゃいけません。

「おはよう」「こんにちは」「おやすみ」「がんばったね」「また明日」すべて一秒です。

この言葉をそれぞれの職場や、地域、そしてまず何よりも親と子の間で、会話としてつながりを作っていくことが大切なのではないでしょうか。