なぜいま念仏か(1)7月(前期)

親鸞聖人の教えの特徴は何かと尋ねられますと、すぐ「他力本願」とか「悪人正機」といった言葉が思い出されます。

阿弥陀仏の本願をただ信じるのみで救われる教えだととらえることもできれば、また念仏の一道を説いている教えだといえるかもしれません。

確かにそういった思想に、親鸞聖人の教えの特徴を見ることができるのですが、もっと具体的に私たちの日常生活で身近に感じられるものを探してみますと、それは

「迷信をもたいないことだ」

といえるようです。

このことは西本願寺で、浄土真宗という教団の特徴を

「深く因果の道理をわきまえて、現世祈祷やまじないを行わず、占いなどの迷信にたよらない」

と示していることから見ても明らかです。

真宗信仰に生かされているものは迷信をもたない。

これはまさしく当たり前のことなのですが、この点をよく考えていただきたいのです。

これは、世界における宗教の最大の不可思議さの一つと見てよいほど、非常に重要なことであるといえます。

また、いかに評価してもし過ぎるということはありません。

ここで「因果の道理をわきまえる」という言葉に注意してみます。

因果の道理とは何でしょうか。

原因と結果の法則にほかなりません。

この世には眼に見えないさまざまな不幸があります。

また今日ですでに原因ははっきりしているのですが、人間の力ではどうにもならない、突発的あるいは不可避的な災難にも出会います。

家族や自分が、不慮の出来事に遭遇したり、原因不明の不治の病にかかることは前者ですし、地震や雷、台風などに襲われることは後者です。