門徒さんの自宅にお参りに行きますと、たまに
「うちは仏壇が北向きなんですけど、本当はいけないんですよね」
ということを言われます。
そこで
「なぜ北向きだといけないんですか?」
と聞き返しますと
「他人からそういうことを聞いてからです」
というような答えが帰ってきます。
つまり、ただ他人から聞いたというだけのことで、そこに明確な根拠はないのです。
では、なぜ仏壇についてそのようなことを言われるのでしょうか。
もしかすると、死者を北枕にして寝かせるという昔からの風習があることから、北は死を連想する方角だと思っておられるからかもしれません。
そこで仏壇の意味について改めて考えてみましょう。
仏壇は、極楽浄土の様子を象徴的に表したものであり、その中心には阿弥陀如来がご安置されています。
また、この浄土は私たちのいのちの帰する世界だと説かれています。
そうしますと、いのちの帰する世界であるお仏壇を家庭に置くということは、まさに仏壇が日常生活の中心にあるということす。
しかも、その仏壇は亡くなられた私たちの縁ある方々が先に往かれ、この私を待っていてくださる浄土をかたどったものですから、そのような方々とのつながりを感じ、このいのちを生き抜くための心の支えとしてはたらく場所だともいいえます。
このような意味で、
「北向きの仏壇は行けない」
などという全く根拠のない言葉に惑うことこそ、私たちは心しなくてはならないのだと言えます。
もし仏壇の置き場所を問題にすることがあるとすれば、それは方角ではなく
「家庭の中で一番良い場所に置く」
ことに留意するということではないかと思います。