文字通り、胎児が母胎を出て生まれることです。
仏典には、人が出生するということは、父母の和合などさまざまな因縁なよって成立することが述べられ
「もしくは母が飲食するとき、種々あれこれの飲食物や精気(エネルギー)によって活命することが胎を受けることの根源である。
形体が完成し、感官がそろい、母によって出生を得る」
と説かれています。
このように、出生という言葉には
「私がこの世に生まれてきた背景は種々さまざまな縁(条件)によっているのだ」
という意味がこめられているように窺えます。
仏伝により、お釈迦さまは生まれたばかりで北に向かって七歩歩まれ、
「天上天下唯我独尊」
と言われたことはよく知られていますが、この部分に相当するインドの原典には
「私は世界で最も老いた者である。
これは最後の生である。
もはや再生はない」
という文言が加えられています。
それは、誰よりも多くの輪廻を繰り返して今ここに生まれてきたという過去を背負った言葉であり、もうこれ以上生まれ変わることはないという決意を秘めた言葉であると思われます。
そうしますと
「唯我独尊」
という言葉は
「私はさまざまな因縁によって、誰よりもかけかけえのない尊い命をもらってこの世に生まれてきた」
という意味になります。
出生とは、私たちが今ここに生を受けて生活しているこの現実が、いかに意味深いものであるかを考えさせてくれる言葉だと言えます。