仏様にお供えするもの、例えば、ロウソクの明かりやお花などには、それぞれ一つひとつにお供えをすることの意味合いがきちんとあります。
その一つである「お香」にも、実は阿弥陀さまのお心を味わう大切な意味合いがあるのです。
お香のいのちは、漂う香りです。
目には見えなくても、あるいは耳には聞こえなくても、お香の香りはそこに居合わせた人を誰かれと差別することなく、全ての人に等しくゆきわたります。
このことから、お香は阿弥陀さまの生きとし生けるものをわけへだてなくお救いくださる、広大なお慈悲の心になぞらえられています。
確かに、体質的にお香の香りになじめないとか、もうもうと焚かれた時の煙が苦手という方が中にはいらっしゃるかもしれません。
特に安価なお香の場合は、清らかな香りよりも白煙だけが目立つこともあったりします。
そのため近頃は、お香を焚くと煙や匂いがこもるという理由からお焼香の変わりにお花を一輪お供えする「献華」という形式も見られるようになってきました。
しかしながら、本来
「灯明」「お花」「お香」
が全てきちんと揃ってこそ、阿弥陀さまへのお供えと言えるのであり、またそれが正しいお仏壇のお荘厳、お飾りです。
お香をお供えするというそのことの意味をしっかりと受け止め、また深く味わっていただきたいものです。
なお、ご家庭ではお線香を焚かれるのが一般的ですが、ご購入の際には少し高価でも香りの良いものをお選び下さい。
少量(一本、あるいは半分)でも、良い香りが漂うと煩悩にまみれた心が洗われて、清らかになるような気持ちになれるものです。