======ご講師紹介======
納 光弘さん(財団法人慈愛会会長)
☆演題 「夢追って生きる」
講師は、財団法人慈愛会会長の納光弘(おさめみつひろ)さんです。
納さんは、患者とその周りの人々を大切にする医療を理念に掲げ、講演会も積極的に行っておられます。
昭和17年、鹿児島市生まれ。
昭和41年に九州大学医学部を卒業後、鹿児島大学医学部付属病院で1年間研修。
その後、神経内科の道を歩まれました。
昭和46年から鹿児島大学医学部に勤務。
昭和62年教授に就任。
平成19年に定年を迎えられ、同年4月財団法人慈愛会会長に就任されました。
また、白血病ウイルスが引き起こす脊髄炎「HAM」の発見者でもあられます。
==================
私には、自分の生き方の転機になった一つの出来事があります。
それは昭和36年、私が大学1年生の夏休みのときに、鹿児島から北海道の宗谷岬まで3500?を自転車で走破したことです。
これは毎日ひらすらペダルを踏み続けて、夕方には民家で一宿一飯をお願いするという無銭旅行でした。
それで、その年の7月17日に、市役所の前で市長さんから激励文をもらって出発したんです。
あの頃は、舗装していない道も多くて、そこをひたすら走るんですから、大変な道のりでした。
それでも走破できたんです。
なぜやり遂げられたのかというと、休まなかったからです。
何度やめようと思ったかわかりませんでしたが、結局やめなかったということが目標を達成できた理由です。
これを当たり前のことだと思うでしょう。
実際、当たり前のことです。
ですが、私の人生にとっては、出発点としてものすごく大事なことだったんです。
このことがあってから、何かをしようと思って一生懸命して、もう無理だ、辛いと思ったときには、この
「やめてしまったら絶対達成できないし、やめなかったらたどりつく」
ということを思い出すんです。
これは、その後の人生の教訓になっています。
当たり前のことだと思われるかもしれませんが、当たり前だからこそ大事なんです。
それならば、どうせ一度しかない人生ですから、目標は可能な限り高く掲げた方がいいと私は思うんです。
ただし目標が高ければ高いほど、実現することは大変になる訳ですが…。
以前記者の方からインタビューを受けた時に、私の趣味は何かと聞かれました。
そのとき私はふと思いついて
「私はいろいろなことをしますが、共通していることは、努力するのが一番楽しいということです。
ですから私の趣味は努力です」
と答えたんです。
とにかく二度とない人生を精一杯生きていこうと思います。
さて、次は
「一期一会」。
出会いの大切さについてお話します。
私の人生は、本当にいろんな出会いに支えられてここまで来ています。
ですが、ただ出会えばいいという訳ではありません。
「出会いの意義が分かること」
が大事なことなんです。
だから私は、人生の中で恩師とか尊敬できる人に出会ったときに、
「すごい」
と感動できたとしたら、その感動できた自分もまた偉いと思うんです。
例えば、私にとって感動した出会いといえば、日野原先生との出会いですね。
本当にしびれました。
それは昭和45年、当時私が聖路加病院にいたときの、ある患者さんの診断でのことです。
日野原先生は、患者さんを見て、それから検査データを見ると、
「ああ、この病気はこれだ」
と、私の聞いたこともない病気を診断されたんです。
そして、その病気の治癒を始めたら、どんどん開放に向かって、2週間くらいで全快していました。
これは1つの例ですけれども、日野原先生を見ていたら、臨床というのは奥が深くて、力を付けるほど診療の喜びが大きくなるんだとつくづく思いました。
たとえ無理だとしても、いつかはこの先生みたいになりたいと思って過ごしました。
このように、私は日野原先生に大変感銘を受けたんですが、実は非常に有り難いことに、日野原先生も、たった8カ月しかいなかった私のことを気に入って下さったらしいんです。
だから、お互いに認め合うというのが本当の出会いだと思うんです。