「地獄」
という言葉は、サンスクリット語
「ナラカ」
の訳語で、元来は幸いのない、苦しみのみの世界を意味していました。
それが、中国に至り地底の獄界として表現され、凄惨なイメージが膨らみ、さらに日本に至って因果応報の獄界として定着したようです。
また中国の唐の時代に道世という人が編集した『諸経要集』という書物には、地獄の
「地」
は、
「地とは底なり、いわく下底」
つまり、私たちの生命のもっともどん底、存在のもっとも根底ということで、
「獄」
とは
「自在を得ず」
という意味だと説いてあります。
「獄」
という言葉には
「拘局」
という意味があります。
「拘」
とは
「拘置する」。
引き止められるとか、しばりつけられるということです。
「局」
は
「局限」。
一つの状態に押し込められということです。
つまり
「獄」
とは、一つの状態に押し込められ、そこに縛りつけられているということだといえます。
そこに
「自在を得ず」。
つまり、ある意味で自由気ままに夢をのばしていく、そういう私たちの心をいちばん深いところから縛りつけている、私を現にいまこのような在り方に縛りつけている、そういうものを表す言葉が、
「地獄」
という言葉であると言えます。