今の30代くらいの人たちはそれをするような場がありません。
会社では、シーンと仕事をして、仕事が終わっても飲みに行くという関係がない。
家に帰っても、家族はそれぞれテレビを見たり、インターネットをしていたりして、コミュニケーションの場がありません。
そういう意味で、今の若い人は大変弱ってしまう状況に陥っています。
私たちの目から見ると、そういう世代の人たちはいろんな機械を使いこなして、新しいこともたくさん知っていて、とても賢い新しい世代の人に見えます。
とかく今の時代、インターネットやメール、あるいは電車に乗る時の自動改札と、いろいろ新しい機械、設備が出てきて、昔と比べてものすごく様変わりしています。
そして、それを使いこなせないと、時代遅れで古い人間だというような雰囲気があります。
私はそれがすごくおかしなことだと思います。
説明もなく、知らないうちに新しいやり方というのが出てきたら戸惑いますよね。
でも、それでもたつくと、若い人たちに舌打ちされたり、高飛車な態度をとられたりします。
新しいものがどんどん作られて便利になるにしても、今までのやり方が使えなくなって、新しいやり方を無理やりやらなければならないというのは、実は人間にとってものすごいストレスなんです。
でも、それを使いこなせなかったり、すぐにわからなくても、恥ずかしがったり引け目を感じたり、情けないと思う必要は全然ないと思います。
周りが勝手に変えたんだから、私たちにわかるように説明してほしい、と言う権利はあるはずですよね。
本来なら、古いことや昔のことを知っているという方が尊重されてもいいはずなのに、実際は昔のことを知っていることは偉いことでも何でもなくて、むしろ新しいことを知らない方がだめだ。
新しいことを知っている方が偉いというような雰囲気が、今の私たちの社会にはあります。
これは、本当におかしいことだと思います。
新しくなるというのは、便利なことのような気がしますが、よかれと思って変えたことが、結果として鬱病が激増する状況を生んでしまっています。
変えるということは、必ずしもいいことばかりではありません。
逆に変わらなかった雑談を大事にするような日本の文化の中に、支え合いがあったかもしれないんです。
そういう意味で、日本の社会は昔の人に学び直す必要があると思います。
だから今、ある程度年齢を重ねた年配者の方々には、自分の話は時代遅れとか言わずに、ぜひこれまで積み重ねてきた経験や知識、方法などを自信を持って下の世代に教え語っていただきたいと思います。
そこに、今の日本の社会が抱えている問題から、抜け出すヒントがあるような気がします。