======ご講師紹介======
鮫島吉廣さん(鹿児島大学農学部焼酎学講座教授)
☆演題「焼酎に魅せられて」
ご講師は、鹿児島大学農学部焼酎学講座教授の鮫島吉廣さんです。
昭和22年、鹿児島県南さつま市生まれ。
昭和46年に京都大学農学部を卒業。
ウイスキー会社を経て、昭和51年薩摩酒造株式会社な入社。
平成3年に常務取締役研究所長、製造部長。
平成13年には焼酎かすをリサイクルするサザングリーン協同組合理事長を兼務。
平成18年、鹿児島大学焼酎学講座の設立に伴い、その教授に就任。
健在に至る。
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以前、焼酎はにおいがとてもきついお酒だと言われていましたが、実はこれ、芋焼酎の特徴というわけではないんです。
傷んだ芋を使ったり、麹(こうじ)技術が未熟だったために、そういう悪いにおいが生じていたんです。
さらに日光に当てたり、明るい所に置いておいても、油臭と呼ばれる悪いにおいが付きます。
だから、出来るだけ早く飲むか、そうでなければ新聞紙を巻くなどして、日光の影響を少なくする必要があるんです。
黒い瓶は大丈夫なんですけど、最近はかっこいいボトルとかがありますよね。
白いボトルに入った焼酎もありますが、ああいうのが一番危ないんです。
値段は高い上に、まずくなりがちなんですね。
そういう物はちゃんと箱の中に入れておくとか、暗いところに置いておかなければなりません。
焼酎のお湯割りという飲み方ですが、ウイスキーには絶対にない飲み方です。
これは、どういう飲み方なのでしょうか。
焼酎を飲むとき、お湯が先か焼酎が先かということがよく言われますが、最近ではお湯を先に入れる人が多くなりました。
なぜかというと、焼酎の味というのは、アルコールの濃度と温度に大きな影響を受けるからです。
ですから、手ごろな温度というものがあります。
昔の割合だったらちょうどいい温度になるので、焼酎の後にお湯を入れてもよかったんです。
ところが最近は、割合が薄くなってきていますから、お湯を後に入れると、コップの上の温度が熱くなってしまう。
でも、お湯を先に入れると、コップの冷たさでお湯の温度は5度も下がります。
そこで、焼酎を入れれば飲み頃の温度が作りやすくなる。
だから焼酎4対お湯6とかの薄い焼酎を作るときは、お湯を先に入れるわけです。
また、よく比重が違うという人がいますが、お湯と水とで比重は違ってきます。
お湯と焼酎の場合、比重は同じくらいなんですが、水の場合だと焼酎の方が軽いんですね。
だから水割りを作るときは焼酎を先に入れて、後から重たい水を入れると、よく混ざるんです。
お湯割りを作る場合は、お湯を先に入れるとコップが温まりますから、焼酎を入れると対流が起きてよく混ざるんです。
さらに上下の温度差もなくなりますから、飲み頃の温度が結構長続きします。
このように、お湯が先というのにもちゃんと理由があるというわけです。
それと、焼酎のアルコール濃度は25度ですから、それの半分の濃度で出してくれたら楽でいいのにという人もあるんですが、意外と売れないんですね。
それは、焼酎のうま味成分というのは、アルコール度数が高いほどよく溶け込んでいるからなんです。
だから、薄めると溶けきれなくなる。
そうなると、うま味成分が少ない物しか出せなくなるんです。
25度の焼酎をお湯割りにすると、濃度が半分になって溶けきれなかったうま味成分がお湯によって溶かされます。
お湯割りというのは、単にアルコールを薄めるだけではなくて、溶けきらなかったものを溶け込ますという役割も担っているんです。
だから、単に薄まっただけでなくて、何となく丸くなったなとか感じることがありますし、お湯割りの最初の1杯目と、ちょっと冷えてきたときの味も違ってきます。