「家族の絆地域の絆」(前期)コツは昭和天皇になることです

======ご講師紹介======

平川忠敏さん

(鹿児島大学医学部教授)
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「知人が入院しています。

励ますにはどういう言い方をすればよいでしょうか。

『頑張って』

と言うのはよくないと聞きましたので、そう言わないとすると、どんな適当な言葉があるんですか」

というご質問を頂きました。

私は

「カウンセリング」

と言って、ガンなどでもう余り長くは生きられない方々とお話しをする仕事もしています。

「頑張って」

と言うのは落ち込んだ人や病気で頑張れない人に対しては、言ってはいけません。

なぜなら

「頑張って、頑張って」

と言うのは、そう言う人を目の前にして落ち着きのない私自身を励ます言葉だからです。

何と言ったらよいのか分からない自分自身を励ますために言っているんです。

そんな励まし方は良くない。

ただもうそばにいるだけで、あるいは手足をさすってあげるだけでいいんじゃないんですか。

そばにいて、

「大丈夫ですよ、困った時には何か言って下さいね」

というふうにして寄り添い、接するのが大切なんじゃないかと思います。

ところがやっぱり励ましたくなりますよね。

我々の世代は特にそうだったのですが、

「しっかりしろ、頑張れ、一番になれ」

と、鍛えられた世代であります。

あるいは僕らの育てた子供たちもそうかもしれませんが、だから今、世の中が少しおかしくなってきているのではなかろうか。

だから今こそ厳しさから優しさへ切り替えなければいけないと思います。

「しっかりしろ、頑張れ」

という言い方から、

「ほー大丈夫か、ほー大変だったね」

こんなふうに、切り替えないといけない。

あのですね、コツは昭和天皇になることです。

「あ、そう」。

「もっとしっかりせんか」

とか言いたくても言わないんですよ。

疲れたと言ったら

「あ、そう」。

ところが疲れたと言ったらだいたいの人は

「もっとしっかりせんか」

と言うんです。

だから先ほどお話したように、病院のベッドに寝ている人に

「しっかりせんか」

と言って帰るんです。

この弊害が今に及んでいます。

皆さんも切り替えて、昭和天皇ですよ、

「あ、そう」。

これが心理学でいう共感なんです。

これがコツです。

だからどんなことがあっても

「お前がしっかりせんからよ」

なんて言わないんです。

そうすれば相手も私のことを受け止めてもらったと思うんです。

私たちは

『いのちの電話』

という24時間365日の電話相談をしております。

いろんな相談が来まして、皆さんの中からも

「どんな相談が来ますか」

というご質問がございましたが、基本的には一生懸命聞いてあげるんです。

どうしようもないから電話をしてくるんですよ。

解決方法があったらどっかで解決していますからね。

どうしようもなくて、顔を見せなくてもいい、名前を言わなくてもいい電話相談に電話をしてくるんです。

私たちはひたすら一緒に涙を流す、あるいは一緒に喜ぶ、そういったことをする、共感する。

それは気持ちを聞くということです。

これが、これからの人間関係に非常に大事なことだと思います。

そうすると、ずいぶん救われると思います。

いのちの電話では、どうしようもない悩みを抱えた人が相談をしてこられます。

一番多いのが

「孤独」

です。

一人ぼっち。

本当に1人で孤独な人は、多くの方が自殺をされるんです。

しかも60歳以上の方が多いんです。

1人暮らしの人、孤独な人、病気などで苦しんでいる人、そのことを聞いてくれる人がいない人、そういう人が1日に1人以上死んでいく。

皆さんも死にたくなったら、「いのちの電話」

に電話しましょう。

24時間で僕らはちゃんと電話番をしていますから。

099−250−7000。

大事なことですよ、皆さんは110番や119番に電話したことはないかもしれませんが、あるというだけで何かホッとするでしょう。

それと同じです。

皆さんもお電話下さい。