「死を食べる」(中旬)ハエがいないと素敵な生活はない

数が増えているシカですが、弱い動物なのですぐ死んでしまいます。

じゃあ、これにカメラを向けようと思いました。

撮影したシンの死体写真を見ていくと、しばらくしたらタヌキが現れてあっという間に死体がなくなります。

次にキツネが来ます。

骨もほとんどなくなり、原型をとどめていません。

冬でしたが、3カ月で死体がきれいになくなりました。

冬の死体というのは、そこに五体満足残らないんです。

冬でもキツネなどの動物は活動できますので、安心して食べられる所へ、少しずつちぎって持っていくんです。

ですから、現場には骨すら残らない。

これが冬の動物を処理する作法の例です。

あちこちに持っていって食べられない部分は置いていき、それが地域のネズミの栄養になるというように、自然界って非常にうまく分配系が出来ているんです。

お互いが持ちつもたれつの関係、それぞれがつながって生きているんです。

そして、とうとう骨もなくなり、夏には毛も残りません。

ここに死体があったなんて、全く想像できないような状況が展開されるんです。

自然界の掃除屋さんと呼ばれ、家庭の生ゴミも食べてしまうようなタヌキですが、5月下旬に見つかったタヌキの死体を見ますと、ものの3日でウジだらけになっています。

そして、ものすごい勢いでウジがタヌキを食べ、あっという間に死体はなくなりました。

すると、今度はさらにハクビシンという動物がそのウジを食べに来ます。

次はカラスがやってきて、ヒナの毛布に使うため死体の毛をむしります。

ちゃんと死体からリサイクルしているんです。

私たちだって、毛布を着て寝ているでしょう。

あれだって動物の毛ですよ。

人間もそうやって助けられています。

だんだん死体は分解されていきますが、夏の死体は肉食動物が食べないため、頭から全身まで骨が残ります。

これを、夏は主に虫たちが処理します。

実は、虫はいろんな分解係、解毒係をしています。

死体は、腐敗が進むと、コレラ菌など健康な生き物にとっては、やっかいな病原菌が出てきます。

感染を未然に防ぐために、ウジがわいて死体を食べてくれるんです。

それがないと、他の生物がみんな病気になってしまいます。

つまり、ハエがいないと、今の素敵な生活はできないんです。

しかし、ハエが増えすぎてもいけませんから、それをコントロールする生物がいっぱいプログラムされているのが自然界なのです。