子猫育て

2年前の10月2日。

朝、法事に向うため、車のとこに行くと、ボンネットにいつも家の周りをうろうろしているノラ猫が、大きなお腹をして座っていました。

「もうすぐ赤ちゃんが生まれるのかな」

「何匹くらいお腹の中に入っているのだろうか」

と思いながら、その猫を車から降ろして、出かけました。

その約20分後、自宅から携帯に着信が入っていて、全ての法事を終えてかけ直してみると

「玄関に体が羊膜に包まれたままの猫の赤ちゃんが1匹いて、しばらく外において様子を見ていたけれど、母猫が迎えに来る様子もなかったから、うちに連れてきている」

ということでした。

そして、その日から子猫育ての毎日が始まりました。

夜中も起きて、2〜3時間おきに、子猫用の粉ミルクを溶かしてミルクをやり、最初は動物用の哺乳瓶でも子猫の口のほうが小さかったため、スポイトで与えていました。

そして、温かく濡らした布でおしりをポンポン刺激して排泄をさせ、常にに保温を心がけました。

実は、その数年前にも、親猫が突然死んでしまった、まだ生まれて間もない子猫を何匹か育てたことがありました。

その時は、子猫が感染症に罹り、全て死んでしまいました。

色々な情報を集めてみると、生まれたばかりの子猫を人間の手で育てていくのは

「とても難しいことです」

「大変なことです」

と書かれたものばかりだったので、今回猫一匹育てるにしても、本当に毎日が緊張の連続でした。

お世話を繰り返しながら、毎日の中で最初に私が驚いたことは、ミルクが少しでも冷えてくると、全く飲まなくなり、温め直すとまた飲み始めたことです。

ふとした変化に新しい心配をしたり、新たな発見をしたりして、ささいなことであっても喜びに感じる日々が過ぎていきました。

はじめは閉じていた目や耳も順調に育ち、日がたつごとに開いてきました。

手さぐりの中で、いろんなことを調べては次へといった感じでしたが、どの資料にも「だいたい10日前後で目が開いてきます」と書いてありました。

しかし、その10日が過ぎてしばらく待ってみても、目が開く気配がなく、だんだん心配になって、動物病院に相談してみました。

すると

「目やには出ていませんか」

「くしゃみをしませんか」

と、何度も尋ねられました。

「どちらもありません」

と答えると、

「それにしても目が開くのが遅いですね。病院に一度連れて来てください」

と言われ、電話を切り、猫の様子を身に行くと、さっきまでしっかり閉じていたはずの目がパチッと開いていました。

嬉しい気持ちと、さっきまで心配して病院に相談していたのに、「このタイミングで!!」と思うと、笑ってしまいました。

子猫が、約生後1カ月過ぎるまでの間というのは、昼夜問わずお世話をし続けた感じでした。

今年で2年過ぎたその猫は、今元気にうちの中で過ごしています。

そして、私はよくこの猫をなでながら、この奮闘した時のことを思い出して「大きくなったなあ」と感じています。

出遇うことの不思議さ、生命力、いのちが育まれていく時間の中に今があり、大変な苦労や深い思い、願いが向けられているなと、改めていのちのことも見つめさせてもらった、貴重な体験でした。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。