『利他他者の喜びを自らの喜びとする』(前期)

あなたの手のひらを眺めてみてください。

親指、人指し指、中指、薬指、小指。

では、親指を順番に他の指先に重ね合わせてみてください。

どうですか。

全部の指先にくっつくと思います。

指の中で唯一他のどの指ともくっつくことができるのがこの親指です。

また、親指は常に他の四本の指の方を見ています。

手の指を親子の関係に例えたとき、なるほど「親」指だと気付きます。

常に見守り、直ぐに寄り添う。

手のひらの中に見る仏教の味わいです。

そのように親は常に子を思い、どのような状況にあっても離れず、大きな安心感こそ親のはたらきです。

親とはおもしろいもので、我が子が笑顔の時には自分も笑顔であり、泣いているときは同じように悲しい表情になるものです。

つまりは、共に泣き、共に笑い、共に悲しみ、共に喜ぶ。

子どもの心情と共にあるのが親という存在ではないでしょうか。

仏教でいう利他とは、まさにこの親のはたらきと重ねてみることができるといえます。

いつまでも子どもの立場で受け身の価値観ではなく、親の恩を知り、今度はその如く私が他の誰かに恩を繋げていく。

そこで初めて、利他の完成と言えるのではないでしょうか。