「泣き笑いガン日記」(下旬)拝む心で生きて感謝の気持ちで死ぬ

私、俳句が大好きでして、出会ったのが「種田山頭火」という人です。

自由律ですから、この人は五七五ではないんですが、泣きたい私の気持ちの中を狂いなく詠みはった一句がありました。

『捨てきれない荷物の重さまえうしろ』。

この人はどんな人なんやろと読み進めていくなか、四十過ぎて出家得度しはりまして、酒が好きで俳句が好きで、酒を飲んでは家族に迷惑をかけて、これ以上迷惑をかけんとこということで、妻子を捨てて旅に死に場所を求めていくんです、一握りの米をもらいながら。

それでも酒がやめられずに日本列島をはいかいしたという人やそうです。

旅に死に場所を求める山頭火、俺は何か生き場所を求める旅がしたい、生きたあかしを残したいと思いました。

鹿児島県庁から、桜島を右手に見て海沿いの道を一日三十キロ歩くんです。

『ほほこけてそれでも歩く列島の旅』

『雨降ってぬれては歩く列島の旅』。

自作の句であります。

いろんな町でたくさんの方と出会って、旅で体はだんだんやせていくんですが、心が太っていくようなそんなうれしい気持ちでありました。

途中でテレビとか新聞とか来ましたが、お断りしました。

売れない芸人のパフォーマンスと思われたくなかったからです。

一期一会でいろんな縁を積み重ねて列島を旅するなかで、私のこの旅の一番の協力者となっていただきました、「生きがい療法」を提唱される岡山のドクターなんですが、ガンや難病の研究に一生をささげてきた人らしいです。

その人と出会ったときにできました一句、

『列島をゆけばうれしや人の味』。

このドクターが言うには、どんな人間でも毎日三千個から五千個のガン細胞が出てるそうで、それを正義の味方のナチュラルキラー細胞というのが出てきてはガン細胞をやっつけてくれる。

このナチュラルキラー細胞を活性するのには、「笑う」というのがええそうなんです。

人間というのは、拝む心で生きて、感謝の気持ちで死ななうそや。

人はひとりでは生きていかれへん。

いろんな人との出会いがうれしくて生きていける。

優しい言葉を掛け合って生きていける。

ひとりじゃないんだ。

たったひとりで始めた列島の旅が、千人近くの方に出迎えていただいて、うれしいというほかありませんでした。

殺伐とした時代にはなってきておりますが、人間のいのちは重たいです。

とは言いながら、もっともっと生きたいのに四十ちょっとという若さで亡くなってしまったニュースキャスターの久和ひとみさん。

逆にもっともっと生きられるのに自ら死を選んでしまった桂三木助さん。

命っていうものをいろいろ考えさせられます。

でも、私の見解でいけば、生きはるうちは喜び生きるべしや。

『花は色、人は心、話は味わい』。

うれしい出会いがあってこその一期一会でございます。