「努力は実る」(下旬)相撲は神事である

行司には階級があります。

まず、木村家と式守家というのがありまして、木村家が本家、式守家は木村家から同じ立場に取り立てられた客分という関係になっています。

そのため、式守家は木村家を支え、盛り上げていかないといけません。

ですので、同じ最高位の立行司(たてぎょうじ)でも、式守伊之助が裁くのは二番で、木村庄之助だけが一番を裁くようになっており、明確に差がつけられています。

行司は房飾り(菊綴)の色や足袋・草履の有無など、服装によって階級が見分けられます。

例えば、立行司の庄之助は、総紫の房飾りに刀を差し、その横に印籠を付け草履を履いて土俵に上がります。

同じく立行司である伊之助は、房飾りが紫白になっている他は庄之助と一緒です。

1つ下の三役格になると、房色が朱色、草履で土俵に上がれますが刀がありません。

それより下の位の幕内格・十両格では房色の違いの他、印籠も刀もなく、白足袋で土俵に上がることになります。

幕下以下になりますと、牛若丸と同じ格好をして裸足で上がります。

行司は階級別にこのような装束となっています。

最後に相撲が神事であるということについてお話します。

相撲には土俵入りという、新しく作った土俵に神様をお招きする儀式があります。

われわれ行司が3人1組で神官役を務め、そこで「掛巻(かけまく)もかしこき〜」と祝詞(のりと)をあげます。

そこに、審判員、横綱、大関、三役以上の力士、役員、それからどひょう築いた人、呼び出しさん、そして行司全員が参加して15日間の無事を祈って初日を迎えます。

そして千秋楽が終わり、優勝者と力士を表彰してから、最後に神送りの儀式を執り行うんです。

また、土俵の屋根には青・赤・白・黒の房が差合いますが、あれは春夏秋冬と五穀豊穣を意味しているんです。

青色の房は春、青竜という神さまが宿っていることを意味します。

赤色は夏で、宿る神さまは朱雀。

白色が秋で白虎が宿ります。

そして黒が冬を表し、玄武が宿ることを意味しています。

その他、手刀を切る、ちりちょうずを切る、四股を踏む、これら全てが邪気を払って、清めて、相撲を取るという一つの神事なんです。

勝っても負けても、相手を敬う気持ちを持ち、正々堂々と戦った後は、礼儀正しく礼をして土俵を去る。

それが「相撲道」です。

しかし、中には負けて土俵をたたいたり、蹴飛ばした人もいました。

負けて悔しかったのは分かりますが、出来だけやらない方がいいですね。

土俵は神さまが宿っている神聖な場所なのですから。