正信偈には、どのようなことが書かれているのですか?

正信偈(しょうしんげ)は、浄土真宗の宗祖である親鸞聖人がお書きになられた『顕浄土真実教行証文類(けんじょうどしんじつきょうぎょうしょうもんるい)』という聖典の中の一節です。

『教行信証(きょうぎょうしんしょう)』あるいは『御本典(ごほんでん)』とも言われます。

『顕浄土真実教行証文類』は「教文類(きょうもんるい)」「行文類(ぎょうもんるい)」「信文類(しんもんるい)」「証文類(しょうもんるい)」「真仏土文類(しんぶつどもんるい)」「化身土文類(けしんどもんるい)」の6巻でできています。

この中の「行文類」の最後のところに正信偈が出ています。

正信偈は7言60行120句の漢詩で、正式には「正信念仏偈」といい、念仏を正信する偈(うた)という意味で浄土真宗の教えの要が凝縮されています。

正信偈は大きく3段にわけることができます。

まず、冒頭の2句「帰命無量寿如来 南無不可思議光」を「帰敬序(ききょうじょ)」といいます。

「限りない命の如来に帰命し、思い量ることのできない光の如来に帰依したてまつる」と、阿弥陀如来からいただかれた信心が、この2句に表明されています。

次に「依経段(えきょうだん)」(法蔵菩薩因位時~難中之難無過斯)は、『仏説無量寿経』によって阿弥陀如来と釈尊の徳を讃えられた章です。

『仏説無量寿経』は、親鸞聖人が真実の教えが説かれているために大切にされた経典で「依経」とは「この経典に依る」という意味です。

この章では、まず阿弥陀如来がすべての衆生を救う願いを起こし建立されたお浄土と、そこに生まれる道が説かれています。

続いて、釈尊がこの世に出られた理由は阿弥陀如来の願いを説くためであったことを讃え、最後に阿弥陀如来からいただいた信心の徳が表されています。

後半の「依釈段(えしゃくだん)」(印度西天之論家~唯可信斯高僧説)はインド・中国・日本と3国にわたって、この教えを伝えて下さった7人の高僧方(7高僧)を讃える章です。

7高僧は、インドの龍樹菩薩(りゅうじゅぼさつ)・天親菩薩(てんじんぼさつ)。

中国の曇鸞大師(どんらんだいし)・道綽禅師(どうしゃくぜんじ)・善導大師(ぜんどうだいし)。

日本の源信和尚(げんしんかしょう)・源空聖人(げんくうしょうにん)です。

この高僧方は、釈尊の説かれた教えを、それぞれの時代の中で自らの生き方を通して検証され、また、著書(論釈)によって独自のもののとらえかたをおしめしくださいました。

正信偈にはおおまかに以上のようなことが書かれてあります。

親鸞聖人が釈尊のまことの教えに帰依し、7高僧の書かれた書物を拝読し、阿弥陀如来のご恩の深いことを知り、報謝のために書かれたのが正信偈です。

私たちも正信偈を拝読し、お勤めさせていただき、その深いお心を味わいたいものです。

解説書を読んでみたり、お寺でお聴聞を重ねてさらに味わいを深めていただければと思います。