「露の団姫の極楽寄席」(中期)落語で仏教の教えを広めたい

信仰心が最近見直されるようになっています。

数年前の大学の研究結果で、何かしら宗教的な信仰心のある人とない人では、同じ病気になると信仰心のある人のほうが病気の治り方が早いということが分かったらしいのです。

信仰心があると心が元気になります。

心が元気になると体も元気になります。

今、私たちは「みなさん、信仰心を持ちましょう」と積極的にお勧めしているところです。

仏教の教えは8万4000通りあるといわれます。

それだけたくさんの教えがあるかからこそ、どんな悩みや苦しみでも必ず解決してくれるということです。

仏教の教えの中で、一番の中心となっていますのが、すべての命が大切であり平等であるということです。

今から2500年前に仏教を開かれたお釈迦さまが平等ということを世界で初めて説かれたのです。

我々人間はもちろん、犬や猫、ほかの動物たち、また草や木や花、そういうものもすべて大切な命であると説かれているのです。

私もこのような仏教の教えを勉強していくうちに、こういうすばらしい教えがあれば、この先の人生にどんな辛いことがあっても元気に生きていけるのではないかという活力をいただいたのです。

このようなすばらしい教えを自分自身でひとり占めにしていたのではもったいない。

もっといろんな人に知ってもらいたいと思いました。

そして、人に知ってもらうには自分自身がお坊さんになるのが一番早いと考え、落語家になり、それからお坊さんになって落語で仏教を広めようと思ったのです。

先に入門したのが落語家の方で高校を卒業してすぐ18歳のとき、大阪にあります露の五郎一門に入門しました。

18歳から21歳まで3年間修業させていただきプロの落語家になりました。

そののち、今度は僧侶にもならなければいけないということで、比叡山に通い、修行をさせていただきたいと懇願し、4年間ぐらい通いつめてやっと得度(とくど)することを許されました。

比叡山でお坊さんになる場合、頭を丸めなければなりません。

私は25歳のときで、私自身は15歳からの10年越しの夢が叶い、喜んで頭を丸めますという気持ちだったのですが、私の母親は私が初めて頭を丸める瞬間、ちょっと涙ぐんでおりまして「私な、あんたのこと、やりたいようにやったらええと育ててきたけれども、ほんまに髪の毛、ええの」って聞かれたので、ここは母親を泣かしたらいけないと思って、「お母さん、ええねん、私な、ほんまにお坊さんになってやりたいことがたくさんあるからな、私な、髪よりも仏の道やねん」と言ったのです。

こうして母親も納得してくれて無事に比叡山に修行に行けることになりました。

比叡山は今から1200年前に伝教大師最澄(さいちょう)さんが開かれた山で、日本仏教の母山ともいわれております。

親鸞聖人も20年間にわたりこの比叡山で学ばれたそうですし、浄土真宗の七高僧の一人、源信(げんしん)さんも比叡山で修行され、我々に極楽のこと地獄のことを分かりやすく説いた「往生要集(おうじょうようしゅう)」という書物を著されました。

いろいろな方がこの比叡山でお念仏の教えを学ばれたわけです。