手打診療所は、年中無休二十四時間態勢を維持しておりますけど、これを維持するのはなかなか大変なんですね。
離島では医療の確保が難しいというのは、昔から言われています。
今は医療の確保は医師探しと言っていいと思います。
医師がいてくれさえすればいいという時代から、やはり医療の質の確保ですね。
より専門的で、より信頼のおける、より安全な医療をという、皆さんが思っておられるようなことを、島の人達もみんな知っておられる訳です。
それをどうするかということが大事になってきています。特に救急医療は大事ですね。
手打診療所は重装備診療所ということで、大概のことはできるようになっています。
診療所だけれども、ある程度専門的な検査とか治療が出来るように、病院的な機能を持たせようということでやっている訳です。
特に救急医療対策ではしっかりしたことが出来るようにしております。
医師も一人ではなかなかやっていけません。
医療連携が大事です。
市のドクターも一緒に手打診療所に来て、力を合わせてやる、そういう拠点病院ですね。
医学教育の場としての機能を持たせています。
CTなどは、私が島に行った昭和五十三年当時は考えもしなかったですが、今ではこれが当たり前になって、いつでも手術できる態勢になっています。
それから、人工透析も平成二年からやっています。
これは非常に喜ばれましたね。
離島医療というのは、非常に広がりがあります。
医療という側面だけを切り取っても、なかなか問題は解決しません。
背景として気候だとか風土、あるいはその島の文化、経済、交通、歴史、そういったもろもろのものを知っておく必要があります。
それからもう一つ大事なことは、いろんな問題点は裏返してみると、良い点に早変わりすることもよくあるということです。
例えば、生活の場としての離島というのがあります。
生活することは大変だけれども、昔から生活しておられる人たちにとっては島が一番ですよね。
鹿児島県は「七つのS」(桜島・西郷隆盛・焼酎・スローフード・スローライフ・スパ・新幹線)というのを今あげています。
しかし、この中に「島」が入ってないんですよ。
島のスローライフということらしいでけれども、ぜひ県知事に「島のS」を入れてほしいなと思っています。
そういうのんびりとした島の暮らしというのは、良い点でもある訳です。
他にも、子育ての場としての離島もありますし、医療は貧弱だけれども、癒しの場としての離島もあります。
医学教育の場としての離島もあるし、日本の玄関としての離島もある訳なんです。
鹿児島から見たら甑島はへき地です。
東京からだと、なおさらです。
しかし、そこに住んでいる人たちから見たら、島こそまさに地球の中心なんです。
だから、そういう人たちの視点から島を見る必要がある。
逆に島からものを見る必要もあるんじゃないかなというふうに思っています。