「心の病からみた現代社会」(上旬)うつに「頑張れ」は厳禁

ご講師:増田彰則さん(増田クリニック院長)

今、5大疾病の1つとして数えられている

「鬱(うつ)」

の患者さんが増えています。

「うつ」

とは、気力、意欲が低下した状態で、活力が枯渇して、ほとんど元気がない状態をいいます。

現在、男性の10人に1人、女性は男性の倍くらい、うつ病の患者さんがいるといわれています。

しかし、うつは恥ずかしい病気ではありません。

一時期、非常にやる気や気力を失うというのはよくあることです。

うつは大人の病気というイメージがありますが、そのうつが今は子どもにも増えています。

小学生の子どもで1.6%、中学生でも5%くらい、うつ病の患者さんがいます。

子どもが朝起きれない、学校に行けない、気力がわかないというのは、単に怠けだけじゃなくて、心が疲れきってしまってうつになるというケースもあります。

そういう場合に、たたき起こして

「学校に行け」

とい追い出すように行かせると、逆効果になる訳ですね。

うつ病患者は、1994年に44万人だったのが、2008年に104万人と、この10年間で2.5倍くらいに増えています。

男性はちょうど働き盛りの30〜40代に多く、女性は60代以降に多いのが特徴です。

うつは、仕事人間で頑張り屋さん、なんでも一生懸命してしまう真面目な方に多いです。

自分に厳しく、休養を取らない人ですね。

こういう人は本当に消耗しきって、うつになってしまうことが多いので、上手に休養が取れるようにならなければいけません。

休養を取り、身体と脳を休ませてあげること。

そして、病院に行って、もらった薬を飲み、しっかり睡眠を取って、ストレスがある環境を変えれば、1〜2カ月でだいたい快復します。

ですから、決してうつは怖い病気でもないし、治らない病気でもありません。

的確な治療をすれば、ちゃんと快復してまた本来の元気を取り戻します。

うつは、まじめで頑張り屋さんがなると言いましたが、最近はそうでない

「新型うつ病」

というものがあります。

20〜40代の若者に多く、軽いうつ状態で無気力状態です。

しかし、特徴があります。

職場で厳しい上司から叱られると、それが原因で仕事が嫌になって、病院で

「私はうつで、ちょっと休みたいから診断書を書いてください」

と言うんですね。

そして、診断書を書いて

「ゆっくり休みなさい」

と言いますと、遊びに行ったり、彼女とドライブしたり、海外旅行に行く人までいます。

そして、そろそろ診断の期限が切れて、出社可能ですという診断書を書きましょうかと言うと、

「またお腹が痛くなりました」

と言うんです。

もう1つ、上司から叱られると、

「叱る上司が悪い」

と言って、他人のせいにする傾向があります。

自分自身の問題として受け止めないんですね。

しかし、ここで厳しいことを言うと、ますますその人は悪くなりますから、

「お前のやり方が悪い。もっと頑張れ」

というように批判せず、とりあえず話を聞いて受け入れ、無理に励まさないことが大切です。

反対に、しっかり話を聞き、職場環境を変えてあげたり、気を緩めて過ごせるような環境を整えてあげることが大切です。

優しく声かけをするなどして、まず家でゆっくり休ませてあげることが大切ですね。