しかし、範宴は、 「かわいそうじゃ」 と、かぶりを振って、肯…
山蔭の土牢の口には、雑草が蔓(はびこ)っていた。 じめじめと…
翌(あく)る日の未明である。 まだ仄暗(ほのぐら)いうちに、…
範宴は、うなずきながら、ほろりと涙をこぼした。 小さい手で、…
座主の室で、銅鈴が鳴った。 役僧のひとりが、執務所の机を離れ…
「どこへ?――」 不敵な眼をしながら、朱王房は鐘楼の柱へ足を…