======ご講師紹介======
小嶺忠敏さん(長崎総合科学大学教授)
☆演題 「動」人を育てる
昭和20年、長崎県南島原市生まれ。
大学卒業後、母校の教諭としてサッカー部監督を務め、インターハイ優勝などの実績を残されました。
昭和59年に国見高校に社会科教諭として赴任。
サッカー部を全国高校サッカー選手権で6度の優勝に導かれました。
また、平成19年には夏の参議院選挙に出馬。
現在は、株式会社V・ファーレン長崎代表取締役社長。
長崎県サッカー協会会長。長崎総合科学大学教授などをお務めです。
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私が若いころは、教育とはただ上から教え込むものであり、それをするのが先生の役目だと思っていました。
でもそれは間違いでした。
教え込むべきところと、自分から成長するところの2つがあるんです。
だから、教育は
「教える」
という意味の育てると、
「育つ」
という意味の育てるの2つがあるんですよ。
まず
「育つ」
ということについてお話します。
この前、広島県で高等学校の先生を集めて話をしました。
そこで
「国見高校の小嶺さんの教育というのは、まるで軍国主義の教育のようだと聞くけれど、どうなのか」
という質問が出ました。
確かに、自分自身振り返ってみますと、島原商業高校で監督をしていたころの私は勢いがよかったですけどね。
ご承知のように、商業高校というのは男子が少ないです。
私が勤め始めた昭和45年は、300人高校入試を受験に来る生徒の内、男子は60人しかいませんでした。
したがって、サッカー部の部員も全学年合わせて13名しかいなかったんです。
それでも一生懸命やって、ちょうど10年目にしてインターハイ、夏の全国大会で初優勝しました。
その後も、島原商業高校では夏のインターハイで2回、国見高校では14回優勝し、トータルで17回日本一になりました。
全国大会出場は101回でした。
そういう実績もあって、その強さの秘密は私が軍国主義だからじゃないかということで、私の所に来たら練習風景を見たいという申し出がよくあるんですよ。
私の方は、寮に泊まっていただくことを条件に、どうぞと言って見てもらっています。
私の練習風景というと、まず3つぐらい先入観があるそうですね。
1つ目。
頭を坊主にさせて軍国主義のようだとのこと。
確かに坊主頭ですが、決して軍国主義じゃありませんよ。
2つ目。
毎日何十キロも走らされるイメージがある。
島原商業高校の監督をしたころならともかく、今の子どもに毎日何十キロも走らせたら、1カ月で入院しますよ。
今の子ども達には、その体に応じたトレーニングをして、徐々に鍛えていかなければいけないんです。
3つ目。
練習時間が毎日6時間か7時間なんじゃないかとのこと。
実際の練習時間は、毎日2時間半です。
もちろん土曜日は試合があって長いですがね。
このような練習風景をご覧になった皆さんは驚かれます。
そういう先入観が全部崩れたと言いますね。
一例ですが、国見高校では、毎日体育館で1時間の朝練をします。
内容は主にミニゲームで、みんなに好き勝手にやらせます。
私は、何も指示しません。
時間を計って、始めと終わりの合図をして、組み合わせを変えてやるだけです。
それ以外は優勝チームには牛乳をおごろうとか、最下位チームには後片付けをさせたりするぐらいですね。
そうして毎日遊びながら練習することによって、アイディア、創造性が生まれてくるんです。
私がこうしろ、ああしろと言って指導したら、自由な発想は生まれないんです。
子どもは遊びの天才だと言うじゃないですか。
好きに遊ばせれば、いろんなアイディアを考え出すんですよ。